全日本選手権 2011
全日本選手権の出場を決めたのはジロの最終週。
監督にはジロのあとは休みをとれって言われたけれど、コンディションが上がって調子がよかったのと、震災後に岩手で開催されることに意義を感じて、全日本のタイトルを狙って帰国した。
ひとりでの参戦で厳しいレースになるだろうって周りは騒いでたけど、実際のところ僕自身そのことでナーバスにはならなかった。
ひとりでも勝つ自信はあった。
実際に大変だったのはレースの内容よりも、勝つための準備。メカやマッサージなど、レースに臨む体制を整えるために色んな人達に協力してもらった。
まずは全日本選手権個人タイムトライアルが行われた。帰国をなるべく遅らせて、レースに臨むようにした。というのは、ヨーロッパの方がTTバイクで走る環境があるので、集中してTTのポジションを煮詰めた。会場入りしたのは2日前。
TTは走り出してしまえば、他の選手は関係なくゴールまで自分との戦いだ。ホンネを言えばもっとタイムを出せそうだったけど。
でもあの時にできる最大限のコンディションでレースに臨めたこと、そして勝利という結果がついてきたことは嬉しかった。
Photo:Kei Tsuji
心の中には「まずは1つ目」2週間後には全日本選手権ロードレースが控えている。
TTを終えた後、ロードレースのコースを試走しに岩手県八幡平を訪れた。
平坦だと聞いていたのに実際は登りゴールだった。
だけど自分に向いているコースだと実感し勝負は最後の登りになると感じて、レース1週間前に長野の八ヶ岳で登りを取り入れた合宿を組んでレースに備えた。
レースがどんなシチュエーションになるか、考えられる全ての可能性をイメージトレーニングしながら距離を稼いだ。
レース当日。序盤の6人の逃げを自分でわざと道を塞いで行かせて様子を見たけれど、どのチームも誰も追わない。
そしてあまりにもプロトンのペースが遅くて痺れを切らしてアタックした。
前に追いつければこのグループで逃げ切れると思ってそのまま踏んでいった。前に無事に追いついて「これでレースはこのグループで決まりだ!」っと思ったけど、追いついてみると各チームの思惑が違っていて、思うような共同体制が取れなかった。
Photo:Kei Tsuji
そうこうしているうちに愛三工業がものすごい追い上げを見せてきて。こっちもいいペースで走っていたはずなのに、結局追いつかれ、違う展開を考えざるを得なくなった。
追いつかれたのは仕方ない、集団も小さくなっているだろうと思ったらまだ大勢の選手が残っていた。
そこで考えを変えてみた「このコースは、決して難しいコースじゃない」。
誰でもついてこれる展開というのは、裏を返せばみんな登りで飛び出せるほど抜きん出ている選手がいないことを意味している。
そして一周様子をみて登りを登ってみたけど、そこには脅威になるような選手はいないと感じた。
自分に勝算はある。
動くのを一旦止めて、残り一周の登りで力を使おう。そう考えた。
最後は予想通りの展開になった。誰のアタックも決まらないまま、最後の登りに突入した。ゴールがスプリント勝負になることは織り込み済みで前々日、前日と試走で左・右・真ん中のラインを全て試して、ラスト何メートルがスプリントをかける最高のポイントかを吟味していた。
残り60mにある緩やかに右に曲がるブラインドコーナーを右で走れば最短距離のライン。
Photo: Hideaki Takagi
これが僕の準備していた別のプランだった。だからスプリント勝負に持ち込まれても焦ることはなかった。
勝てるラインを走るだけだ。
Photo: Hideaki Takagi
そして狙い通り、スプリントで勝利することができた。
全日本選手権は、力がある選手しか最後まで残れない。
だからチームがないことがマイナス要因だとは思わなかったし、逆に自分を信じて走ったことが結果につながったと思う。
結果はもちろん嬉しかったけれど、それ以上に自分が想定していたすべての状況に対応できて、準備期間からゴールの瞬間まですべての動きがピッタリはまったことに嬉しさを感じた。
レースに臨むのに、多くの人のサポートを受けてスタートに立った。支えてくれるみんながいてくれることで、メンタル的に余裕が生まれてリラックスしてレースを迎えることができた。選手ひとりの精神的な成長は、周りの支えがあってこそなんだと改めて実感した。2006年に全日本TTとロードで勝った時も同じことを感じたよ。
嬉しかったことは他にもあった。若い選手が活きのいい走りを見せてくれたこと。レースの内容は良くなっていると思う。
物怖じしないでガンガン仕掛けてきたところは面白かった。日本のレースもちょっとずつ変わってきているのを走りながら感じた。
これでナショナルチャンピオンジャージを着てヨーロッパを走ることになる。東日本大震災で世界の目が日本に向けられている今、このジャージを着て日本を代表して走るということには、以前とは違う意味がある。日本を違った角度で見てもらうことができるのだから。
Photo: Kei Tsuji
「ひとりじゃない」のメッセージを、日の丸を背負うことでより強く伝えていきたいと思う。
次のレースは7月23日に開幕するツール・ド・ワロニー(UCI2.HC)。この5日間のレースが新しいジャージのデビュー戦。別府史之ここにあり、というのをナショナルチャンピオンジャージとともに示してきます!





















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